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インコネルってどんな材料?その2
~インコネルの特徴~ 
 
インコネルの特徴は?
てつお「インコネルについて教えて!」
 
てつこ「藪から棒に何?前にも教えたじゃない」
てつお「前はハステロイとの違いだけにフォーカスしちゃったから…」
 
てつこ「そういう事ね。分かったわ。今回は説明が長くなりそうなので気合を入れてね!」
てつお「・・・!!
 
てつこ「まずは、そもそもインコネルがどういうものだったかを説明してみて」
てつお「インコネルはスペシャルメタルズ社(Special Metals Corporation)(旧インコ社・International Nickel Company)の商品名でニッケルをベースとして、鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等の合金元素量の差異によって600、625、718、X750などに分かれているんだ」
 
てつこ「そうね!そしたらインコネルとハステロイの違いを教えた時の内容から推測できる、インコネルが削りにくい理由はわかるかしら?」
てつお「えっ?!?!」
 
てつこ「よーく思い出してみれば、きっとわかるはずよ!」
てつお「インコネルはハステロイに比べて、クリープ強度高温強度が高くなる成分が含まれていたな…」
てつお「アルミやニオブの添加靭性が高くなって、アルミやチタンを添加する事で、高温強度が上がる…」
てつお「靭性が高いから、材料が粘り強い!そうすると、切削くずが切れずに工具に巻き付いたり材料にバリが残ったりする!?」
てつお「それから、高温強度が高いなら、熱を加えても強さが変わらないから削りにくいぞ!」
 
てつこ「よく分かったわね!若いと記憶も良くて理解も早くて羨ましいわね!」
 
てつこ「その他にも、加工硬化が生じやすい工具との親和性が大きい熱伝導率が悪いという理由も挙げられるわ」
てつお「う~ん、大体ハステロイと同じなんだね」」
 
てつこ「そうね。実は靭性も、インコネルの方が高いっていうだけで、ハステロイも同じく粘り強くて削りにくいの」
てつお「前回は、使い道や成分なんかを比較したけど、加工する側から見たらどっちも変わらない削りにくさ…」
てつお「でも小坂鉄工所では、そんな加工の難しいインコネルを精密加工できるんだよね!」
てつこ「そうよ!てつおもいずれは、加工する事になるんだから、頑張ってよね!」
てつお「そういえば、小坂鉄工所で扱っているインコネルはどんなものがあるの?」
てつこ「うちでは、718>>>625>600>>X-750の順に多く扱っているわよ」※1 
てつお「718が圧倒的に多いんだね。INCO718はどんな材料なの?」
てつこ「INCO718耐熱性耐食性耐酸化性耐クリープ性などに優れていて、耐酸化性は1000℃まで良好よ。極低温でも機械的特性が良いし、700℃まで高強度なの」
 
てつこ「航空宇宙、石油・ガス関連(ガスタービン)、原子炉、海水に接するものの部品などに使われているわ。」
てつお「ふむふむ。625も600もX718も教えてほしい」
 
てつこ「仕方ないわね」
 
てつこ「INCO625孔食隙間腐食侵食粒間腐食耐性が高いわ。」
てつお「えっ、なんか急に難しい言葉いっぱい出た」
 
てつこ「孔食っていうのは、金属に発生する局部腐食の一種で、見た目の孔の大きさのわりに、深く広がる腐食のことよ」
てつお「表面の穴は小さいのに、中は進行しちゃってる虫歯みたいな・・・?」
てつこ「そんなイメージね」
 
てつこ「隙間腐食は、取り付けたボルトや溶接個所などの隙間部分で発生する局部腐食よ」
てつお「歯と歯の隙間が虫歯になるみたいな?」
 
てつこ「そんなイメージだけど、厳密には孔食隙間腐食で、腐食が発生する原因が異なっているから、そこは要注意よ」
てつお「ふむふむ」
 
てつこ「侵食は、固体・液体・気体が、材料を摩耗させて、表面を変形・劣化させる事ね」
てつお「物理的に削り取られる感じだね!」
 
てつこ「そして粒間腐食は、結晶の中心域より境界域が多く侵され、外からは問題無いように見えるのに、材料的には破壊の域に達しているような腐食よ 」
てつお「…?」
 
てつこ「みかんの実の部分がダメになるのが普通の腐食だとすると、フサの部分がダメになるのが粒間腐食ね」
てつお「なるほどー!!」
 
てつこ「本筋から外れるから、これ以上の言及はしないけど・・・」
 
てつこ「こんな感じで腐食にも強くて、尚且つ低温から1100℃の温度範囲で高強度な材料なの。更にクリープ破断強度疲労耐性も高いし、無機酸有機酸塩基への耐性も良好よ」
てつお「待って!クリープ破断強度っていうのは、耐クリープ性と同じなの?」
てつこ「ごめんごめん。説明してなかったわね!」
 
てつこ「耐クリープ性は、じわじわ変形していく事に耐える性質のことで、クリープ強さとクリープ破断強度は耐クリープ性を評価する尺度になるものよ」
てつお「クリープ強さとクリープ破断強度で耐クリープ性を表しているんだね!」
 
てつこ「クリープ強さは、クリープによる変形を生じさせない為に内部から押し返す力の事を言うの。クリープ破断強度は、クリープラプチャー強度とも言われて、高温下じわじわと変形していってから、壊れる時力の大きさ時間の事を指すわ」
 
てつこ「どれくらいの温度の時に、何時間耐えられます…みたいな」
てつお「僕がサウナに何時間いられるかがクリープ破断強度?」
 
てつこ「それだと力の説明が無くなっちゃうから、サウナの中で尻尾を引っ張られた時に反抗を続けられる時間って感じね」
てつお「ギャー!」
てつお「でも、クリープ破断強度が高い高温下でも長く反抗できるって事だから、すごく強いし使い勝手が良いって事だね」
 
てつこ「そうね。化学プロセス、海洋エンジニアリング、石油・ガス関連、航空宇宙、石炭、石油、天然ガス、原子力などの発電系に使われているわよ」
てつお「より腐食や高温に耐性が必要な分野に使われているんだね!」
 
てつこ「次に、INCO600についてだけど、こちらは耐酸性が普通な代わりに、耐酸化性耐炭化性耐窒化性優れているわ。」
 
てつこ「氷点下~高温下での機械的特性も良くて、加熱冷却の繰り返しにも強いわ。クリープ破断強度高いので、700℃を超える温度下での使用推奨されているわよ」
てつお「温度変化にも、高温にも強いんだね」
 
てつこ「そうね!主に高温下での腐食環境に適した材料と言えるわ」
 
てつこ「化学プロセスや、原子炉部品、石炭、石油、天然ガス、原子力などの発電系に使われているわよ」
てつお「ふむふむ」
 
てつこ「最後に、X-750ね。X-750600℃までの引張強さ820℃までの高温における強度耐腐食性高いわ」
てつお「引張強さ?」
 
てつこ「引張強さって言うのは、材料を両サイドから引っ張った時に、千切れないように耐える力の最大値の事よ」
てつお「僕がサウナで反抗を続けられる時間がクリープ破断強度なら、引張強さは、単純に尻尾がどれくらい耐えられるかって事だね」
 
てつこ「そういう事だけど、尻尾を引っ張るのはやめようね!!
てつお「材料はお金で買えるけど、尻尾はプライスレス!」
 
てつこ「話が逸れたけど、X-750は他にも、980℃まで耐酸化性の高さや、低温での耐腐食性の高さ応力腐食割れへの強さなんかの特徴があるわ
てつお「応力腐食割れ…?」
 
てつこ「引張強さ以下の力で、それが加わった状態が持続する時に、特定の腐食環境組み合わさる事で割れが発生する事よ」
てつお「うーん…?」
 
てつこ「カチカチのパンをそのまま水に浸しても、すぐにはしみ込まないわよね」
てつお「うん!カチカチのフランスパンを切らずにそのままシチューにつけて食べたら、全然染み込まずに口がズタズタになったよ!」
 
てつこ(そういえば、いつもフランスパンを丸かじりしてるわね)
 
てつこ「でも、引っ張ってヒビを入れた状態で水に浸すと、すぐに水がしみ込むわ」
てつお「なるほど~!そういう事か~!!(尻尾で例えられなくて良かった・・・!!)
てつお「耐腐食性が高いだけでは防げないような割れもあるって事だね!」
 
てつこ「そういうことね!」
 
てつこ「産業用、航空機用タービンや、ロケット、極低温場面で使用する部品、圧力容器、原子炉などに使われる他、応力腐食割れへの強さから、スプリング、ばね座金などにも使われているわ」
てつお「なるほど~!」
てつお「インコネルは全体的に腐食への耐性も強いけど、どちらかと言うと高温強度クリープ破断強度が高くて、物理的な強さに特徴があるものが多いんだね!」
てつこ「そうね!」
てつお「たくさん頭使って疲れたな~~。今日はサウナでも行ってこよーっと」
※1  2020年12月初旬のデータです。
※本ページの内容は2021.6.14時点での調査結果を元に執筆されたものです。
 
 
けんさくの補足説明
 
  けんさく
インコネルハステロイNiが主体の合金なので一般によく使われる鋼より重く、ほとんどが比重8以上ですぞ。
SUSが7.7~7.9、S45CやSS400が7.8程度である事を考えると、比較的重い方でありますな。
ちなみに、アルミの比重は2.7、金は11以上であります。使い勝手が良いからと言って多用してしまうと、コストが跳ね上がるだけでなく、とんでもなく重くなってしまうので要注意ですぞ~。
最終的なニーズを考えながら、それに適した材料を使う事が大切なのであります。
小坂鉄工所では、様々な要望に応えられるよう、インコネルやハステロイだけでなく、様々な材料を削っていますぞ。


株式会社小坂鉄工所
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