難削材ってどんな材料?
てつお「小坂鉄工所は、難削材の加工が得意って聞くけど、難削材ってどんな材料のことを言っているの?」
てつこ「難削材っていうのは、削りにくくて加工がしづらい材料で、工具の性能が発揮されにくかったり、加工能率の低下によって加工費の増大を引き起こす要因になったりするもののことよ」
てつお「なんだか難しいかも・・・」
てつこ「例えば、ダイヤモンドをかじったらどうなる?」
てつお「そんなに硬いものをかじったら、歯が欠けちゃうよ!」
てつこ「じゃあ、ガラスをかじった時は?」
てつお「ガラスが割れちゃう!」
てつこ「そうね。難削材の特徴として、今言ったような硬度が高いものや硬くて脆いものがあるわ。工具そのものが破損してしまったり、無理な力を加えると材料が割れてしまうようなものは削りにくいわよね。」
てつこ「ほかには、加工硬化性が大きいもの、工具との親和性が高いもの、熱伝導率が小さいもの、靭性の高いものなんかが挙げられるわよ。」
てつお「????」
てつこ「順番に説明していくわね。」
てつこ「まずは加工硬化性からね。雪が降った時、積もったばかりの雪はふわふわよね。でも、たくさん人が歩いた後はどうなる?」
てつお「人がたくさん通ったあとの雪はカチカチになってる!」
てつこ「イメージはそんな感じね。加工硬化性が大きい材料っていうのは、力を加えれば加えるほど、硬さが増していくようなものを指すわ」
てつこ「加工中にどんどん材料が硬くなっていくと、どうなると思う?」
てつお「工具がすり減ったり、壊れちゃうかも!」
てつこ「そういうこと!」
てつこ「次に、工具との親和性が高いものね。これは、材料と工具がくっつきやすいものの事を指しているの」
てつお「くっつきやすい?」
てつこ「そうよ。加工中の切削くずが、たくさん工具にくっついてしまうと削りにくいわよね」
てつこ「それから、熱伝導率の小さいものの説明ね。熱伝導率っていうのは、熱の移動のしやすさのことよ。」
てつお「じゃあ、熱伝導率が小さいってことは、熱がその場所から移動していってくれないってこと?」
てつこ「その通りよ。つまり、切削時の高熱が逃げにくいっていうことね!」
てつお「ずっと高温のまま削っていたら、工具が痛んじゃうよ!」
てつこ「そういうことよ!じゃあ、熱伝導率が低くて、工具との親和性が高い材料を加工すると、どんなことが起きると思う?」
てつお「えーと・・・、まず切削くずが工具にくっついて・・・削っている場所がすごく熱いままだと・・・」
てつお「切削くずが工具についた状態で溶けちゃうんじゃ・・・」
てつこ「そうね。溶けてくっつくことを溶着って言うんだけど、切削くずが工具に溶着すると、困ることがいろいろあるわ」
てつお「切削くずが溶けてくっついたら、工具の形が変わっちゃう?」
てつこ「察しがいいわね!」
てつお「そんな状態の工具で削ったら、精度も落ちるし、ムシレちゃうよ!」
てつこ「そういうことよ!だからこの二つの特性がある材料は削りにくいの。それから、切削くずが工具から剥がれ落ちる時に、工具の一部を巻き込んで剥がれることもあるわよ」
てつお「すっごい困る!」
てつこ「最後に、靭性について説明するわね」
てつこ「靭性っていうのは、材料のねばり強さのことなの。材料強度と延性が両方とも強いもののことね」
てつお「????」
てつこ「粘土を切った時を思い出してみて。粘土は綺麗に切れたかな?」
てつお「切り口が潰れて、伸びた気がするよ!」
てつこ「そういうこと!材料の粘りが強いと、切削くずが切れずに工具に巻き付いてしまったり、材料にバリが残ってしまったりするの」
てつお「なるほど・・・!それはすっごく削りにくいね!」
てつこ「以上で説明は終わりよ。難削材がどんなものなのか、わかってくれたかしら?」
てつお「うん!難削材っていうのは、工具がダメになりやすかったり、精度が出しづらかったり、ムシレやバリが出やすい、加工の難しいもののことだった!」
てつこ「簡単にまとめると、そうね!」
てつお「そんな材料を削って、こういう精密部品を作るのが僕たちの仕事なのか~」
てつこ「そういうこと!それじゃあ仕事に戻りましょう」
てつお「はーい」
●●けんさくの補足説明●●
てつこさんの説明を踏まえて、具体的にどんな材料が難削材の特性を持っているのかを少し紹介するであります。
加工硬化性が大きく工具との親和性も高い材料として、ステンレス(SUS)なんかが挙げられます。
ただ、一般的なステンレスは近年の加工技術や工具の進歩によって難削材とは呼ばれなくなってきていますぞ。
これらは加工硬化性の大きさ、工具との親和性の高さ、高温強度の大きさ、靭性の大きさが備わった材料であります。
他にも熱伝導率の小さい、チタンやインバーもそうでありますな。
小坂鉄工所では、こういった難削材の問題点を、現場の技術や生産技術で克服し、たくさん加工しておりますぞ。