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ステンレスってどんな金属?
~錆びない鋼って本当?~
 
ステンレスってつまり何・・・?
てつお「かくかくしかじかというわけで…」
 てつこ「ステンレスについて知りたいわけね」
てつお「日常生活でもよく見かけるけど、いまいち分かっていなかったよ…」
 てつこ「てつおの中で、ステンレスはどんなイメージ?」
てつお「シンクとか蛇口とか、水回りで見かける事が多くて、ピカピカのイメージがあるよ」
 てつこ「そうね。ステンレスっていうのはステンレス鋼(Stainless steel)の事なんだけど
てつお「英語が出てきた」
 てつこ「この、Stainlessっていうのは、汚れのない・しみのない・錆びないっていう意味なの
てつお「つまりStainless steelで錆びない鋼?!ステンレスは錆びない鋼ってこと?!」
 てつこ「と言いたい所だけど、鋼が何だったか覚えてるかな?」
てつお「え~と、は、鉄と2%以下の炭素でできた合金で、よく見かける"鉄"はこのにあたるものだったよ!」
てつお「あれ?」
てつお「じゃあステンレスも鉄の仲間?でも鉄は錆びるしな…?」
 てつこ「ややこしいんだけど、まず、ステンレス鋼は鋼の中でも特殊鋼に分類されるの」
てつお「ふむふむ。特殊鋼か~!!」
 てつこ「特殊鋼がどんなものかは説明できるかな?」
てつお「・・・・」
 てつこ「特殊鋼っていうのは、鋼に対して他の元素を添加したり成分を調整したものの事よ。英語ではspecial steelと言うわ」
てつお「添加や調整をしたらスペシャルなの?」
てつこ「鋼を牛乳に例えるなら、特殊鋼は『別の味を楽しみたい、特定の栄養素をもっと取りたい』といった目的別で味や栄養素なんかを加えたり除いたりした乳飲料みたいなものよ。低脂肪乳とか、コーヒー牛乳とか」
てつお「なるほど…それはスペシャルだ!」
てつお「銭湯で飲むフルーツ牛乳は特別感があるもんな」

てつこ「その特別感はちょっと違う気がするけど…
てつお「じゃあ、ステンレスは、錆びないように成分を調整した材料ってこと?」
 てつこ「その通りよ!…と言いたい所だけど、実はステンレスも錆びるの」
てつお「エ"ッ」
てつお「じゃあ全然スペシャルじゃないじゃん!
てつお「普通じゃん!普通の鋼なら普通鋼だよ!
てつこ「誰も普通に錆びるだなんて言っていないわよ!
てつこ「場合によっては錆びる事もあるけど、錆びにくい鋼なの」
てつお「鋼なのに錆びにくい…」
てつお「じゃあスペシャルだ!」
てつお「でも、何をどうしたら鋼が錆びにくくなるの?だって、鉄は普通に錆びるんだよ?」
てつこ「まず、錆が何かは説明できるかな?」
てつお「もちろん!」
てつお「金属の表面が茶色くガビガビになったやつの事だよ!」
てつこ「どうしてそうなるかを説明して欲しいかな・・・」
てつお「湿気が多い場所に置いておくとガビガビになる?」
てつこ「ざっくり説明すると、金属と空気中の酸素が化学反応を起こして酸化したものの事をと呼ぶわ。湿気が多い場所で錆が発生しやすいのは、水分酸化を促進させるからね」
てつお「鋼が錆びるのは、鋼の中の鉄が酸素と反応して酸化鉄になるからってことか!」
てつこ「そういう事!」
てつお「じゃあ鋼が錆びないようにするには、鉄が酸化しないようにすればいいって事だね!」
てつお「・・・どうやって?」
てつこ「それはね、クロムを約12%以上添加して鋼の表面を酸化被膜で覆うの!」
てつお「酸化被膜?」
 てつこ「クロムが酸素と結合する事で出来る、超薄いバリヤーの様なものの事よ」
てつお「超薄いバリヤー?」
 てつこ「このバリヤーがある事で、空気と金属が直接触れるのを防ぐ事ができるの」
てつお「レインコートを着た僕みたいな感じだね!」
 てつこ「う~ん、少し違うわね…」
てつお「なんで?僕もレインコートを着れば、雨が体に直接当たるのを防ぐ事ができるよ」
 てつこ「レインコートは破れてしまったらそこから雨が降りこんでくるわよね?」
てつお「それはそうだけど?」
 てつこ「ステンレスは、例え酸化被膜にキズが付いたとしても、すぐにクロムが酸素と反応して、新たな酸化被膜ができるの!」
てつお「無限バリヤーってこと?!
てつお「最強じゃん!
 
てつこ「無限バリヤーではあるんだけど、実は最強という程完璧なものではないのよ」
 
てつこ「条件によっては、バリヤーが活せずにそのまま錆が発生する事があるの」
てつお「えーッ?!」
 
てつこ「例えば汚れや水分が付着していたりするとバリヤーを復活させることができなくなってしまうわ」
てつお「そんな〇ンパンマンみたいな理由で?!」
 
てつこ「酸化被膜を作る為には、クロムが酸素と結合しなければいけないの」
 
てつこ「汚れや水分が表面に付着していると、酸素が通りづらくなってしまうわよね」
てつお「なるほど!それで酸化被膜ができにくくなっちゃうのか!」
 てつこ「それから、塩分の付着にも弱いわ!」
てつお「今度はなめくじっぽくなったぞ」
 てつこ「塩分に含まれる、塩化物イオンには、酸化被膜化学的に破壊する作用があるの」
てつお「つまり・・・?」
 てつこ「バリヤーをぐずぐずに溶かす毒みたいな感じかな」

てつお「怖っ!!」
 てつこ「それから、アルカリなどの薬品なんかも、種類や温度等の条件によって酸化被膜を破壊するわ」
てつお「ふむふむ。それもバリヤーを溶かす毒みたいな感じ?」
 てつこ「そうね!」
てつお「で、結局のところステンレスって…?」
 てつこ「定義の説明を忘れていたわね!」
 てつこ「国際的な定義では、炭素が1.2%以下クロムが10.5%以上の合金鋼であるとされているけど今まで説明してきた"錆びにくさ"クロムを12%以上含有している事で見られるので、一般的にはクロムを12%以上含む耐食性を高めた鋼だと言えるわね。」
てつお「なるほど!…つまり、錆びにくい鋼!」
 
てつこ「一言で言ってしまえばそうね…でも、通常の鋼よりもずっと錆びにくいから、よく使われているの」
 
てつこ「錆びにくい、錆びない金属っていうのは他にもいろいろあるけど、コストや強度なんかを考えると、ステンレスが広く普及している理由がわかると思うわ。」
てつお「確かに、ハステロイインコネルも錆びにくくて丈夫な金属だった!」
 
てつこ「でもステンレスに比べたらお高いわ。金なんかも錆びにくい金属だけど…」
てつお「お高い上に柔らかい!そう考えると…」
てつお「鋼なのに錆びにくいステンレスってすごい!!!
てつこ「そういう事!」
※本ページの内容は2022.8.18時点での調査結果を元に執筆されたものです。
 
 
けんさくの補足説明
 
  けんさく
てつこさんの説明の中に出てきた「もらい錆」について補足しますぞ。
読者の8割くらいは、バリヤーを張っているのに何故お隣さんの錆びが侵食してきてしまうのか、不思議に思っているはずですぞ!
これは、バリヤーの外側に錆びやすい金属、例えば鉄粉なんかが付着すると、バリヤーの内側には関係ないが、鉄粉は錆びてしまいますぞ。この状態を外から見ると、まるでステンレス鋼自体が錆びているように見えるのであります。なので、その表面の錆びた部分だけ落とせば解決!一件落着!…というわけにはいきませんぞ。この表面に付着した錆、すぐに除去できれば問題ありませんが、放置してしまうと大変ですぞ。表面に錆が付着している状態というのは、バリヤーの外側に錆の原因となる物質が集まりやすくなっている状態であります。また詳細な説明は割愛しますが、この状態になるとバリヤーの強度も弱くなってしまいますぞ。ところでこのバリヤーですが、ステンレス鋼に含まれるクロム鉄よりも先に酸素や水と結びつく事で不動態化被膜(酸化被膜)を形成して、錆原因が鉄と結びつかないようにする事で機能しているのであります。しかしバリヤーが弱くなった所に錆原因となる物質がたくさん集まると、原因物質の量がクロムで処理できる量を上回ってしまい、鉄と結びついて錆びてしまうのであります。
これがもらい錆からステンレス鋼が錆びる理由ですぞ~。

小坂鉄工所では日々、錆びとも戦っておりますぞ。錆びやすい金属は、とにかく防錆・防錆・防錆であります!
どんな金属でどんなものを作っているかは、こちらを参考にして欲しいですぞ~!

参考にさせて頂いた文献

・ステンレス鋼/不働態/鉄/クロム/塩化クロム/塩化鉄/イオン化傾向 /さび「岩波 理化学辞典 第5版」

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